【経産省調査最新版】2021年のEC市場は20兆円!カテゴリ別のトレンドや巣ごもり需要後のEC利用動向も考察

2021年の国内EC市場と各種統計データ
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コロナ禍でオンラインショッピングの利用が拡大し、市場規模が20兆円を超えたBtoC-EC市場。2021年は物販やデジタルコンテンツの市場が引き続き伸びたほか、サービス系も微増となり、EC市場は増加に転じました。

2021年のEC市場はどのように着地し、2022年以降はどのように変化していくのでしょうか。

本稿では、経済産業省が2022年8月12日に公表した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」の数字を踏まえてEC市場に関連する最新データを紹介します。

2022年上半期の市場動向についても、商業動態統計や家計消費状況調査といった政府統計と「futureshop」の流通データをもとに考察しました。事業計画策定の指針となるデータの1つとして、ぜひ参考にしてください。

2021年のEC市場は7.35%増の20兆6950億円

まずは2021年における国内BtoC-EC(一般消費者向けのEC市場)の動向について解説します。

「物販系分野」「サービス系分野」「デジタル分野」の市場を合計したBtoC-EC市場は、前年比7.35%増の20兆6950億円でした。市場規模は前年(2020年)と比べて1兆4171億円の増加。EC市場の自然増に加え、新型コロナウイルス感染症の影響が残り、巣ごもり需要が高止まりしたことなどが市場拡大につながったと考えられます。

【分野別のEC市場規模】

  • 物販系分野 13兆2865億円(前年比 8.61%増)
  • サービス系分野 4兆6424億円(前年比1.29%増)
  • デジタル系分野 2兆7661億円(前年比12.38%増)

2020年は旅行や外食の需要が低迷し、サービス系分野の市場規模が激減した結果、BtoC-EC市場は経産省調査では初めて前年を下回りました。2021年は物販系分野とデジタル分野が拡大したほか、サービス系分野も前年比1.29%増となり、EC市場は拡大に転じました。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年と比較しても、2021年の市場規模は6.89%(1兆3341億円)上回っています。

国内BtoC-EC市場の年次推移のグラフ

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P7 

物販EC市場は13兆2865億円、EC化率は8.78%に上昇

次に「物販系分野」(以下、物販EC)の動向やEC化率、商品カテゴリ別の市場規模などを解説します。2021年の物販EC市場は、前年比8.61%増の13兆2865億円でした。EC化率は8.78%で、前年よりも0.70ポイント上昇しています。

国内BtoC-EC 物販EC市場規模の年次推移のグラフ

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P32  

物販ECの成長率は前年よりも鈍化しましたが、2020年は21.71%増という異例とも言えるペースで市場が拡大したことを踏まえると、2021年の成長率も決して低くありません。むしろ、2021年の実質GDP成長率(年率1.6%)※1や小売業販売額の成長率(前年比1.9%増)※2と比較すると、物販ECの成長率の高さを実感できるのではないでしょうか。

※1 出典:内閣府 2022年3月9日公表 統計表一覧(2021年10-12月期 2次速報値) をもとに算出

※2 出典:経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 商業動態統計月報 2022年6月分 をもとに算出

なお、2021年はスーパーやコンビニ、ドラッグストアの市場規模がほぼ横ばいだったほか、コロナ禍で比較的好調とみられた家電大型専門店やホームセンターの市場規模もマイナス成長に転じました。百貨店の市場規模は前年比4.5%増でしたが、2020年がマイナス25.5%と激減だったことを踏まえると市場環境が好調とは言えません。

実店舗の市場環境は総じて低成長だった一方で、物販ECの成長率が前年比8.61%増だったことは、買い物のチャネルが実店舗からECにシフトした実態を、あらためて浮き彫りにしたと言えるでしょう。

【業態別の市場規模】

国内小売業態別の市場規模 年次推移

※画像クリックで拡大

出典:経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 商業動態統計月報 2022年6月分 をもとに編集部が作成

スマホ比率は52.2%、モバイルがECの主役に

物販ECの市場全体のうち、スマホEC(スマートフォン経由の物販)の比率は52.2%でした。スマホECの市場規模は前年比11.5%増の6兆9421億円。パソコン経由のEC市場の伸び率が前年比5.6%増ですから、スマホECはパソコンECの2倍以上のペースで伸びています。スマホECがEC市場をけん引したことは明白です。

国内BtoC-EC スマートフォン経由の市場規模の年次推移のグラフ

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P46 

スマホ比率が高まっている要因として、スマートフォンの利用率が年々上昇(2021年は88.6% ※3)していることや、EC事業者各社がスマホ対応を強化していることなどが挙げられます。今後は次世代通信規格「5G」が普及していくため、スマホでネットショッピングを行う人の割合はさらに高まっていくでしょう。自社ECサイトはスマホ最適化が必須であり、独自アプリの構築・運用を含めてモバイルショッピングの UXを改善していくことが一層重要になっています。

※3 出典:総務省 情報流通行政局 情報通信政策課  2022年5月27日公表  「令和3年通信利用動向調査の結果」 スライド4

すべての商品カテゴリのEC市場が拡大

2021年は物販ECにおけるすべての商品カテゴリの市場が拡大し、EC化率も上昇しました。市場の成長率が物販EC全体よりも高かったのは「食品、飲料、酒類」(前年比14.10%増の2兆5199億円)、「化粧品・医薬品」(前年比9.82%増の8552億円)、「衣類・服装雑貨等」(9.35%増の2兆4279億円)の3カテゴリです。

カテゴリ別のEC化率を見ると「書籍、映像・音楽ソフト」(46.20%)が突出しており、市場規模の半分近くに達しています。次いで「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(38.13%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(28.25%)、「衣類・服飾雑貨等」(21.15%)となっています。

国内BtoC-EC市場 物販ECのカテゴリ別市場規模

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P54 

サービス系ECの市場規模は微増

旅行サイトや飲食店予約サイトなど「サービス系分野」の2021年の市場規模は、前年比1.29%増の4兆6424億円でした。「チケット販売」や「フードデリバリーサービス」が伸びた一方、「旅行サービス」や「飲食サービス」が前年を下回り、全体では微増での着地となりました。成長率はプラスに転じたものの、2019年との比較では35.23%減(2兆5248億円の減少)と大幅な落ち込みとなっています。

国内BtoC-EC市場 サービスECのカテゴリ別市場規模

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P64 

デジタルコンテンツ市場は12%増

電子書籍や音楽配信・動画配信など「デジタル系分野」は、前年比12.38%増の2兆7661億円でした。「電子出版」が前年比24.23%と大きく伸びたほか、「有料動画配信」や「有料音楽配信」も前年比14~18%増という高い伸び率でした。

国内BtoC-EC市場 デジタルコンテンツのカテゴリ別市場規模

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 2022年8月公表 「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」P69  

2022年のEC市場を考察(政府統計の最新データ)

ここからは、2022年のEC市場の動向について、総務省が毎月公表している家計消費状況調査のデータをもとに考察します。

世帯ごとのEC利用率や、1世帯あたりのEC支出金額を見ると、コロナ禍でEC市場が大きく伸びた2020年や2021年とは異なり、EC市場が踊り場を迎えている実態も浮き彫りになりました。

EC利用率は横ばい

家計消費状況調査によると、ネットショッピングの世帯利用率は2022年7月時点で53.0%です。当月は前年同月比1.2ポイント上昇していますが、世帯利用率の月次推移を見ると、2022年に入ってからほぼ横ばいであることが分かります。

国内のネットショッピング利用世帯の割合の推移

出典:総務省統計局 2022年9月6日公表 「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)-2022年(令和4年)7月分結果-」

ネットショッピングの世帯利用率は、2020年3月時点では45%を下回っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響が本格化した2020年5月は約50%に上昇。その後は50~55%程度の水準で推移しています。

2021年はすべての月が前年同月を上回りました。しかし2022年1月以降は、世帯利用率はほぼ前年同月並みで推移しています。こうした数字を踏まえると、2020年春以降に見られたEC利用率の上昇は一巡したと言えるでしょう。

EC支出額は増加、カテゴリによっては踊り場

1世帯あたりのネットショッピング支出額は増加基調にあります。2020年1月以降の月次推移を見ると、2022年7月まですべての月が前年同月を上回っています。

国内のネットショッピング支出額の推移

出典:総務省統計局 2022年9月6日公表 「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)-2022年(令和4年)7月分結果-」 

ただし、2022年1月以降の支出額を商品カテゴリ別に見ると、カテゴリによって伸び率が大きく異なることが分かりました。

「旅行関係費」や「チケット」といったサービス関連の消費額は大きく伸びています。また、物販ECでは「食料」(食料品・飲料・出前の合計)や「贈答品」が堅調に推移しています。

一方、「衣類・履物」「化粧品」「健康食品」は前年同月比でプラスとマイナスを行ったり来たりしていますし、「家電」や「家具」はほぼすべての月が前年同月比マイナスです。

2022年1月以降のネットショッピング支出額・増減率

※クリックで画像拡大

出典:総務省統計局 家計消費状況調査 月次調査結果をもとに編集部が作成

ネットショッピングの世帯利用率が横ばいであることに加え、カテゴリによっては1世帯あたりのネットショッピング支出額が増えていないことを踏まえると、2022年における物販EC市場は踊り場を迎えている可能性もあるでしょう。

先ほど紹介した業態別の市場規模の2022年上半期(1~6月)における数字を見ると、百貨店やコンビニ、ドラッグストアなどが比較的堅調に推移しています。2022年はEC市場の伸びが一巡し、実店舗回帰の兆しが見えているのかもしれません。

futureshop利用店舗は2022年も受注件数と単価が上昇

2022年の物販EC市場をマクロで捉えると、成長率は2020年や2021年と比べて鈍化している可能性があります。とは言え、物販ECを手がけているすべての企業のEC事業が伸び悩んでいるかというと、そのようなことはまったくありません。

futureshopをご利用中の店舗さまを対象に、2022年1~3月の受注実績を調査したところ、注文件数は前年同期比15.02%増という高い成長率を維持していることが分かりました。注文1件あたりの購入単価も前年同月比3~8%ほど上昇しています。さらに、新規顧客の人数も前年同期比21.60%増と大幅に伸びていました。

2022年1~3月 futureshop注文件数の成長率

【調査対象】

2021年1〜3月および2022年1〜3月の期間中、各月の注文件数が100件以上の店舗の中から500店舗を無作為に抽出し、各項目を調査しました。詳しい調査結果はこちらをご覧ください。

また、futureshop を1年以上継続してご利用いただいた店舗さまに限定し、業種別(商品カテゴリ別)の流通額を調査したところ、「キッズ・ベビー・マタニティ」が前年同期比354.76%と大幅に伸びたほか、「レディースファッション」「下着・ナイトウェア」「バッグ・小物・ブランド雑貨」といったアパレルカテゴリの成長率も200%を超えました。

2022年1~3月 futureshopカテゴリ別流通総額の成長率

futureshopをご利用中の店舗さまの受注件数や流通金額が2022年も伸びている要因の1つは、店舗さまの多くがさまざまなマーケティング施策を積極的に実行していることです。コンテンツマーケティングやSNS運用、SEO、WEB広告、ライブコマースといったオンラインの施策に加え、店舗受取や店舗スタッフさんによるコーディネート投稿など実店舗とECが連携した施策に取り組む店舗さまも増えています。

そして何より、エンドユーザーとの関係構築を重視し、ファンを増やすCRM施策に力を注いでいる店舗さまが多数いらっしゃることが売上拡大につながっています。メルマガによる情報発信やLINEを活用した双方向のコミュニケーション、SNS投稿を通じたファンとの交流など、顧客とのつながりを深めている店舗さまは2022年も安定的に業績を伸ばしています。

アパレルECの市場規模や課題・具体的な施策について、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

アパレルECを強化するには?市場規模から課題点、売上アップ施策まで解説【2023年最新ノウハウ】

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ライブコマースについて、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

【2024年保存版】ライブコマースとは?ライブ配信の始め方やコツ、メリットや成功事例を紹介

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幅広い施策を打てるECプラットフォームの利用が重要に

2020年から2021年にかけてコロナ禍でEC市場に追い風が吹き、EC売上高を大きく伸ばした店舗さまもいらっしゃったでしょう。しかし、2022年の市場環境は本稿で考察した通り、カテゴリによっては成長が一巡しており、業績を伸ばせる企業とそうでない企業の優勝劣敗がはっきりと現れてくる可能性があります。

成熟した現在のEC市場において、売上を簡単に大きく伸ばせる“魔法の杖”は存在しません。これからのEC市場を勝ち抜くには、新規顧客を獲得するマーケティング施策とファンを増やすCRM施策という、当たり前のことを徹底することが一層重要になるのではないでしょうか。そういった観点で重要なポイントになるのは、EC事業者さまにとって必要な、幅広い施策を実行しやすいECプラットフォームを使用することです。

株式会社フューチャーショップが提供しているECサイト構築プラットフォーム「futureshop」は、新規顧客の獲得からリピート促進、顧客のファン化までを実現する多彩な機能を備えています。店舗受取やECと店舗のポイント連携など、オムニチャネルに対応することも可能です。2022年以降の「アフターコロナ」を見据え、自社ECサイトをさらに強化したいとお考えの企業さまは、ぜひ資料をご請求ください。