ランチェスター戦略から学ぶ、ネットショップ勝利の法則・第1回(全3回)

水上 浩一 出版記念連載 全3回
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こんにちは。EC実践会for futureshopの講師をしています水上 浩一と申します。おかげさまで、現在全国22地域、累計3500名の方々にご参加いただいております。EC実践会は、2009年2月より沖縄でスタートいたしました。今月は13年目のスタートとなります。

2021年1月からは新たな参加店舗の方々との「大阪EC実践会for futureshop第21期」がスタートいたしました。1つの期が6ヶ月間単位ですから、大阪だけで11年目を迎えたことになります。本当にありがたいことです。

2017年にフューチャーショップさん主催「脱・モール依存」セミナーを東京・名古屋・大阪で開催させていただきましたが、そのあたりから特に「自社ECサイトの売上を上げたい」「モールの売上は上がっているのだが、自社ECサイトの売上が全く上がらなくて困っている」といった問題点をお持ちの方々が数多くご参加されるようになりました。

そして、おかげさまで自社ECサイトの売上アップを達成された店舗さんが数多く誕生いたしました。もちろんそれらの素晴らしい成果は100%店舗さんの努力が結実した訳ですが、その努力の方向性が違ってたら残念ながら成果を上げることは難しいと思います。

今回は、努力の「正しい方向性」についてお伝えしようと思います。その正しい努力の方向性を指し示すのが「ランチェスター戦略」だと考えています。

2021年2月26日に新刊「ネットショップ勝利の法則 ランチェスター戦略(マイナビ出版刊)」を出版させていただきました。そこではランチェスター戦略による「正しい努力の方向性」について、大きく3つに分類させていただきました。

  1. 強者の戦略と弱者の戦略の境界線を曖昧にしたインターネットとスマホの出現
  2. ランチェスター戦略6つの視点
  3. 売上高構成比率とキー・プロダクト

それぞれについて説明させていただきます。

(1)強者と弱者の境界線を曖昧にしたインターネットとスマホの出現

1990年代前半までは強者と弱者は、はっきりとしていました。例えば大手広告代理店と、地域の広告代理店では、クライアントの規模と取り扱い金額が全くことなるので、両社は市場ではバッティングしませんでした。しかしここから2つの大きな変化が起こり、その境界線は曖昧になっていくことになります。

変化の一つ目はインターネットの登場とインターネット・マーケティングの進化です。そもそもインターネットを武器と考えると、圧倒的広範囲のユーザーに商品や情報を閲覧してもらえる可能性があります。武器効率的には第二法則、つまり強者の戦略となる訳です。しかし、インターネットは強者も弱者も活用することができるのです。

変化の二つ目はスマホの爆発的普及です。2019年の調査ですとスマホの利用率は日本国内でも85%となり1億人を越えていることになります。一人1台スマホを持っていると仮定したとしても1億台、PCの3倍以上の普及率ということになります。スマホによって日本国内に限定しても、インターネットは、ほぼ全ての購買層を網羅していることになるのです。

これは強者と弱者、両方がインターネットとスマホを活用することで、同じように日本中のユーザーに情報発信や商品紹介ができる環境が出現したということです。一見弱者が強者と同じプラットフォームを使うことができたり、強者と同じ規模の広告を活用することができるというメリットに目がいくかもしれません。

しかし、それは逆に、インターネットを活用したマーケティングでは強者と弱者が同じ市場で戦う可能性がある、ということです。具体的に言うと、Amazonは数億アイテムの品揃えがあり、この品揃え数は、ほとんどのネットショップがAmazonと競合になる、ということを意味しています。

ここで一つの質問をしたいと思います。「Amazonと検索結果で横並びになったとき、Amazonではなくてあなたのネットショップが選ばれる可能性はありますか?

例えば、SEOで上位表示することができたとします。(SEO対策に関しては「EC実践会 for futureshop」でもお伝えしていますし、拙著「SEOに強い!ネットショップの教科書(マイナビ出版刊)」をご覧ください)たいてい、その前後にはAmazonがインデックスされています。そこで先ほどの質問を思い出してください。あなたのネットショップが選ばれなければ、ユーザーはAmazonをタップして、Amazonで買い物をすることでしょう。ですからSEOだけがんばっても売れるネットショップにはなりません。

(2)ランチェスター戦略6つの視点

そこで重要なのがランチェスター戦略6つの視点です。

  1. 一点集中
  2. 局地戦
  3. 接近戦
  4. 差別化
  5. 一騎打ち
  6. 陽動戦

まず「一点集中」ですが、ただでさえ強者と弱者ではリソース(経営資源)に大きな差がありますので、弱者である我々がリソースを分散していてはどうにもなりません。そこでリソースの一点集中を行います。一点集中のポイントは2つ

一つ目は、「商品」「市場」「ターゲット」の一点集中。そしてもう一つは「ビジネス・インパクト」の最も高いところへのリソースの一点集中です。

たとえば、ネットショップの商品ページをもっと売れるように改修をしたいと考えた際に「すべての商品ページに手を加えたい」と考えるかと思いますが、数千ページあるネットショップでは、全商品ページの改修は現実的ではありません。

そこで「ビジネス・インパクトの最も高いところ」を考えます。商品ページのなかで「アクセス数は多いが、転換率が低いページ」は、手を加えることで売上アップに貢献してくれる可能性が高いので、そこにリソースを集中して改善を進めていきます。

実際にEC実践会ではビッグキーワードで検索順位1位になっているページの転換率を上げたことによって、その1ページからの売上が月間100万円アップした事例があります。今回の新刊では、そのビジネス・インパクトの高い場所について「ブランド化」と「顧客インサイト」という二つの視点で解説しています。

次に、顧客戦略の観点で大切なのは、「2:局地戦」と「3:接近戦」です。

「局地戦」とは、インターネットマーケティングにおいて「地域セグメント」と「時間セグメント」を行うことで効率的な広告集客を行うこと。書籍では具体的な事例で説明しています。

「接近戦」には、2つの視点があります。

一つ目は「リスト集客」。メールマガジン、と聞くと「20年前の手法ですよね」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、EC実践会に参加されて成果を上げた自社ECサイトは、100%もれなくメルマガ施策で成果を上げています。もう一つが商品や店舗の露出を高めることによる「マインドシェア」や「ブランド化」。ブランディングとマーケティングは自動車の両輪のように密接な関係にあります。

そして競争戦略の観点では、「4:差別化」「5:一騎討ち」「6:陽動戦」が重要です。

「4:差別化」はマイケル・ポーターの提唱している「バリューチェーン分析」を活用して、競争優位性を発見するフレームワーク「5:一騎打ち」はズバリSEOです。書籍では、特にコンテンツの評価基準である「E-A-T」の観点から競合他社に対する優位性について検証しています。「6:陽動戦」は、自社の成功要因を他社に悟られないようにするネットショップ運営のコツがあり、その方法について説明しています。

これは私自身がネットショップを運営していたときに経験した、「ヒット商品を他社が模倣すること」への対応策がベースになっています。他社による模倣=パクリに対して、最も効果的なのは「新商品」のリリース頻度を上げることだと考えています。では、いったいどんな新商品を、どのようなタイミングで発信していけばよいのでしょうか?

(3)売上高構成比率とキー・プロダクト

新商品のリリース頻度に関して考える上で重要なのが、本書内《「売上高構成比率とキー・プロダクト」と「一点集中」》にて説明している「《アンゾフ・マトリクス》で絞り込んだ市場の拡張性」、「新商品の拡張性の分析」の2つです。

ここまでの話でお気づきの方もいるかもしれませんが、この書籍は「ランチェスター戦略」と「既存のフレームワーク」を融合した内容となっています。活用している「既存のフレームワーク」を一部ご紹介すると

  • STP分析
  • 6R
  • アンゾフ・マトリクス
  • バリューチェーン分析
  • オペレーションの観点からの「QCD」
といったものをランチェスター戦略の観点から活用しています。

ランチェスター戦略では、「ターゲットの絞り込みが重要である」ということを説いていますが、とにかく絞り込めばよいか、というとそんなことはありません。当然、絞り込み過ぎると客数が少なすぎて、売上が上がらなくなってしまいます。

では、どこまで絞り込んだらよいのか?絞り込んだあとはどのように成長していけばよいのか?については書籍をご参照ください。その解説に関しても、先ほどのフレームワークが効いています。新刊ではシニアファッションを事例として、マトリクスを活用した絞り込み方法について説明しています。

「売上高構成比率」と「キー・プロダクト」は、膨大な事例とかなりの期間をかけて、ひたすら分析し続けていったときに、成果を上げている店舗とそうで無い店舗の「違い」に気がついたのが発見の発端です。さらに最高月商売上を更新された店舗さんのデータを分析したときにも、分析したデータにおいて100%当てはまる法則が発見されました。

実はそれが売上高構成比率で、その結果がなんと「コープマン目標値(巷ではクープマン目標値として知られていますが、師匠であるランチェスター経営の竹田陽一先生が音楽家のトン・コープマンと同じ綴りであることからコープマンが正しいとおっしゃったので新刊でもコープマンと記載しています)とほぼ一致したのです。

コープマン目標値は、市場シェアの目標値を定量的に割り出したものです。6つに分類していますが、とくに重要なのは、次の3つです。

下限目標値: 26.12% (26.1%)
安定目標値: 41.71% (41.7%)
上限目標値: 73.88% (73.9%)

これらと、自店舗における売上1位商品の売上高構成比率が相関したのです。そしてこれらの数値から自店舗の販売戦略を導き出していこうというのが新刊での試みです。

✓ 売上高構成比率がどの割合だったら、まだ成長の伸びしろがあるのか?
✓ どの割合だったら月商最高記録を上げることができるのか?
✓ どの割合まで到達したらそれ以上の成長は望めず、新たな新商品開発が必要なのか?
を数多くの分析データから定量的に解説いたしました。

その分析方法をGoogle AnalyticsとExcelを使って簡単に行う方法も掲載しています。是非、新刊「ネットショップ勝利の法則 ランチェスター戦略(マイナビ出版刊)」のノウハウを活用いただき、あなたの自社ECサイトの売上を劇的にアップしてください!

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ネットショップ勝利の法則 「ランチェスター戦略」(マイナビ出版刊) 2021/2/26発売 水上 浩一 (著)

▼ ランチェスター戦略から学ぶ、ネットショップ勝利の法則・第2回 はこちらから

水上 浩一 出版記念連載 全3回 →第2回目

ランチェスター戦略から学ぶネットショップ勝利の法則・第2回(全3回)現場主義編

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